ゴミ屋敷を相続するということは、その物件が周囲に及ぼしている全ての法的リスクも同時に引き継ぐということを意味します。ゴミ屋敷から発生する悪臭や、ネズミ・ゴキブリなどの害虫の大量発生、さらにはゴミの重みによる塀の倒壊や、庭の草木が隣家に侵入している状況などは、近隣住民の権利を侵害している可能性が高いのです。ゴミ屋敷を相続して苦労した経験を持つ人々は一様に、「親ともっと話をしていればよかった」と語ります。ゴミの山は、親が抱えていた言葉にできない不安や寂しさの積み重なりでもあります。もし相続人がこれを知りながら放置し続けた結果、近隣住民に精神的苦痛を与えたり、健康被害を引き起こしたり、あるいは火災が発生して隣家に延焼したりした場合、相続人は多額の損害賠償責任を問われることになります。民法上の工作物責任や不法行為責任に基づき、相続人は所有者として、物件を適切に管理する義務があるからです。「ゴミを溜めたのは亡くなった親だ」という言い訳は、相続を承認した後は通用しません。実際、ゴミ屋敷の相続を巡って近隣住民から訴訟を起こされたり、自治体から行政代執行の手前まで勧告を受けたりするケースは増えています。相続した瞬間に、まずは近隣への挨拶を行い、「現在、清掃の手配を進めています」と誠実な姿勢を見せることが、法的トラブルを未然に防ぐ最大の防衛策となります。また、清掃作業中も、埃や臭いが近隣に漏れないよう業者に厳重な対策を依頼することが重要です。ゴミ屋敷の相続は、個人のプライバシーの問題ではなく、地域社会の一員としての責任を問われる公衆衛生の問題なのです。物件を早期に売却するにせよ、リフォームして活用するにせよ、まずは周囲に迷惑をかけている現状をリセットすることが、相続人に課せられた最優先の義務です。負の遺産を放置することは、自らの社会的信用や経済的基盤を危うくする行為であることを、相続人は肝に銘じておくべきでしょう。
ゴミ屋敷相続と近隣住民との損害賠償リスク