環境衛生学の専門家がゴミ屋敷の室内空気質を調査した結果、そこには通常の住宅では考えられないほどの高濃度で、喘息を引き起こすアレルゲンが浮遊していることが実証されています。調査によれば、ゴミ屋敷の空気一立方メートルあたりに含まれるダニ抗原(ダニの糞や死骸の微粒子)の量は、アレルギー性疾患の発症基準を数十倍、時には数百倍も上回ることが珍しくありません。特に、古い雑誌や段ボール、衣類が山積みになっている場所では、ダニの繁殖に適した暗くて湿った隙間が無数に存在し、そこが巨大なアレルゲン生産工場と化しています。また、カビについても深刻なデータが得られています。ゴミ屋敷では換気が不十分なため、壁面だけでなく、ゴミの山の深部でも多種多様な真菌が繁殖しており、その胞子数は屋外の数百倍に達することがあります。特にアスペルギルスなどの特定のカビは、吸い込むことで気管支内で増殖し、重症喘息やアレルギー性気管支肺アスペルギルス症という非常に難治性の疾患を引き起こす原因となります。さらに、ゴキブリやネズミといった害虫の排泄物や死骸由来のタンパク質も、強力な喘息アレルゲンとして空気中に漂っています。これらの微細な粒子は、人が室内を歩いたりゴミを動かしたりするたびに再浮遊し、数時間にわたって空気中に留まり続けます。友人や家族との連絡も絶ち、暗い部屋でゼーゼーと苦しい息を吐き出すだけの自分を、もう死んだ方がましだとさえ思っていました。しかし、ある時、自治体のゴミ屋敷支援のチラシがポストに入っているのを見つけ、震える手で電話をかけました。やってきた清掃チームの方々は、私の惨状を見ても顔色一つ変えず、「一緒に空気を綺麗にしましょう」と言ってくれました。ゴミ屋敷の住人が慢性的な咳や喘鳴に悩まされるのは、単に「不潔だから」という曖昧な理由ではなく、このような科学的に証明された過酷な汚染環境の中で呼吸を強いられているからです。この調査結果は、ゴミ屋敷の清掃を単なる「片付け」ではなく「環境汚染の浄化」として捉えるべきであることを示唆しています。居住者の健康を守るためには、物理的なゴミの撤去に加えて、空気中に浮遊する目に見えないアレルゲンを徹底的に除去・中和する専門的なアプローチが不可欠なのです。